ヨガは元々瞑想だった!ヨガが現在の形になるまでたどってきた歴史

本記事ではヨガの歴史について解説しています。現在はエクササイズとして捉えられることの多いヨガですが、元々は瞑想法だったと考えられています。

ヨガは、紀元前に誕生したと考えられていますが、その当時は今のようなエクササイズとしてではなく、宗教に関連する瞑想法でした。この記事では、ヨガが誕生してから現在のような形になるまでの「ヨガの歴史」を紹介したいと思います。

ヨガの変遷

紀元前26世紀頃 紀元前26世紀頃
紀元前4世紀頃 ウパニシャッドにヨガが初登場
5世紀頃 ヨーガ・スートラ
14世紀頃 現在のヨガの原型が誕生
17世紀頃 ハタ・ヨガ・プラディーピカー
1920年代 ヨガの科学的研究がインドで始まる
1970年代 第1次ヨガブーム(世界)
1990年代 第2次ヨガブーム(世界)

ヨガは紀元前に誕生

ヨガが誕生した正確な年代はわかっていません。ただし、だいたいこのぐらいに誕生したのではないかという時期はわかっています。今から4000~5000年前のことです。インダス文明の「モヘンジョ・ダロ」については、学校でも勉強したことなので覚えている方も多いと思います。このモヘンジョ・ダロにおいて、ヨガのポーズをとっている像が多数見つかっています。
人類が大昔に築いた文明が誕生したときに、すでにヨガは存在していたのです。その後、紀元前1500年頃にインドにやってきたと考えられているアーリア人の宗教「バラモン教」の奥義書において、初めて「ヨーガ」という言葉が登場します。ヨガは今でもヨーガと呼ばれることがありますが、この発音は、この奥義書に書かれていたウパニシャッド語の発音に近いそうです。

ヨーガ・スートラとは

さらに時が流れた紀元4~5世紀頃、現在、最も古いと考えられているヨガの経典が制作されます。その経典が「ヨーガ・スートラ」と呼ばれるものです。ヨーガ・スートラでは、

「ヨーガとは心の作用を止めること」

と定義しており、心の作用を止めるための8段階の方法(八支則)が紹介しています。太古のヨガは、悟りに達するための瞑想だったことがよくわかります。

現在のヨガポーズの原型は12~13世紀頃に完成

あくまで瞑想だったヨガは、800~900年が経過した12~13世紀になり「ハタ・ヨガ」が登場したことで、「アーサナ」と呼ばれるヨガポーズが組み込まれるようになります。現在のヨガポーズの原型になっているのが、このハタ・ヨガのポーズです。ハタ・ヨガには、現在もたくさんの人が取り組んでいます。ちなみに「ハタ」とは「陽と陰」を表します。

アシュタンガヨガとパワーヨガ

アシュタンガヨガは、ティルマライ・クリシュナマチャリア氏が考案し、シュリ・K・パタビジョイス氏が手を加えた、ヨーガ・スートラの八支則を取り入れたヨガです。その後、1990年代になってパタビジョイス氏に認められたケン・ハラクマ氏が、アシュタンガヨガを基にパワーヨガを考案し、人気を博します。

日本でのヨガ

日本にヨガが伝わったのは平安時代のこととされています。当時の唐から伝わったもので、当然ながら瞑想としてのものでした。

日本で現代のようなヨガが最初に広まったのは、20世紀前半のことです。中村天風氏が考案した「心身統一法」と呼ばれるものです。戦後の高度成長期が始まる頃、沖正弘氏が「沖ヨガ」を考案。「日本ヨガ協会」を設立します。この沖ヨガは、日本における第1次ヨガブームを引き起こしました。

1970年代、ヒッピーブームとともにブームになったヨガは日本でもブームとなり、現在のように、ヨガがエクササイズとして定着します。この頃、ヨガにより記憶力を手にいれたという藤本憲幸氏が多数テレビに出演し、話題となります。日本における第2次ヨガブームが起こった時期です。

1980年代になると、ヨガはフィットネスアクティビティとしての地位も確立します。

1990年代、オウム真理教の影響もあり、ヨガ人口は激減しますが、21世紀に入り、ハリウッド発のヨガブームが日本にも影響。特に若年層の女性のヨガ愛好者が増加します。これが日本における第3次ヨガブームです。

ダイエットや美容効果が注目されるヨガは、女性を中心に広がりましたが、男性の愛好者も増えています。現在、老若男女問わず楽しめるアクティビティとして、日本で500万人以上の人がヨガに取り組んでいるといわれています。

現在、新しいスタイルのヨガも誕生していて、日本では特に「ホットヨガ」の人気が高まっています。

日本で起こったヨガブームの話

日本ではこれまでにヨガブームが3回ありました。第1次ヨガブームは沖正弘氏が考案した「沖ヨガ」。日本にヨガが定着したのは、この沖ヨガのおかげです。沖ヨガでは、ヨガの基本ポーズ・アサナ以外も用いて心と体のバランスを整え、自己の能力を導き出すことを目的としていました。この沖ヨガは日本だけではなく世界にも広がり、沖氏はあのマハトマ・ガンジーとも会い、日本初のヨガ団体を設立。沖氏は20以上の国で沖ヨガの普及に力を注ぎました。

第2次ヨガブームは、ヨガにより優れた記憶力や健康を手に入れた藤本憲幸氏が牽引しました。藤本氏は小さい頃から体が弱く、病気がちでした。心臓病や腎不全なども患うほどでしたが、10代半ば過ぎから断食をすることにより病気を克服。さらにヨガを行うことで優れた記憶力が身についたそうです。この能力に目をつけたのが当時のテレビ局です。「日本一の記憶力を持つ男」などと呼ばれた藤本氏のおかげで、ヨガは現在とは異なる、潜在能力を引き出すための方法として注目されたのでした。

しかし、その後の1995年、あの地下鉄サリン事件が発生します。オウム真理教がヨガ哲学の言葉を使用していたため、瞑想やヨガには悪いイメージがついてしまいました。ヨガのブームは完全に終焉の時を迎えてしまいます。

地下鉄サリン事件の約10年後、ヨガブームが戻ってきます。第3次ヨガブームです。この頃からヨガスタジオの数が増え始め、海外初のヨガスタジオの日本進出も始まります。ハリウッドで名声を得たビクラム・チョードリーの「ビクラムヨガ」が日本に上陸したのもこの頃です。

ヨガはなぜ世界に広まったのか

それにしても、なぜヨガは世界に広まったのでしょうか?もちろん、大昔と現在では、その広がりの理由はまったく違います。先述のように、大昔のヨガは宗教と結びついた瞑想です。神様とのつながりを求めることにより、心の安定を図ることがヨガの目的だったのです。

現代のヨガにはさまざまな形があります。さまざまな流派が生まれるとともに、さまざまな方法のヨガが誕生しています。ヨガに取り組む人たちの数も増え、ヨガは老若男女問わず、愛されるアクティビティになっています。ヨガをトレーニングに取り入れるプロアスリートが増えるとともに、ヨガに興味を持つ人が増えているのも、ヨガ業界にとっては追い風です。健康な体づくり、ダイエット、運動能力の向上など、さまざまな目的で行われるようになったヨガは、これからも世界中でたくさんの人たちが取り組むアクティビティとして愛されることでしょう。

まとめ

ヨガの歴史について紹介してきました。4000~5000年前にはすでに行われていたと考えられているヨガ。瞑想を基に、現在はエクササイズとして多くの人々に愛されています。ヨガが生まれた太古の昔に思いを馳せるだけでも、何か心が洗われた気持ちになります。